スマホで心電図送信、救急現場で活用

 心筋梗塞(こうそく)など緊急処置が必要とされる心臓病の治療に役立てようと、静岡県立総合病院(静岡市葵区、神原啓文院長)が、スマートフォン(多機能型携帯電話)などを使った心電図送受信システムを開発した。救急医療現場や医療過疎地で従来より素早い心臓病治療が可能になるとして、開発者らは「配備が進めば画期的」と期待している。

 このシステムは、文庫本サイズの「ポータブル心電図」とスマホやタブレット端末などを近距離無線通信でつなぎ、心電図の画像をスマホなどを通してリアルタイムで病院のパソコンへ送信するシステム。心電図の画像はスマホなどに無線で送られ、スマホからは電子メールに添付する方法でパソコンへ送信することができる。スマホやタブレット端末は、基本ソフト「アンドロイド」を搭載しているものであれば、アプリケーションを無料でダウンロードして使えるという。

 ハンガリーの医療機器メーカー「ラブテック社」と共同開発した同病院院長代理の野々木宏医師は、このシステムを「富士山(ふじやま)」と命名。川根本町の診療所などに配備し、すでに実証実験を始めているという。

 システム最大の利点は「正確な診断を素早くできる」こと。心筋梗塞(こうそく)の診断に不可欠とされる「12誘導心電図」は大型で高価なため、これまで救急車などへの配備は進んでいなかった。医師法の制限で救急隊員は現場で診断はできず、患者を病院に運んでから医師が心電図を使って診断していたため、治療開始まで時間がかかることが問題となっていた。

 現場から心電図が送られれば、病院側が前もって受け入れの準備や治療チームの招集ができるようになり、野々木医師は「心筋梗塞の治療時間を30分は短縮できる」と胸を張る。

 ポータブル心電図やスマホの配備は救急車や診療所を中心に進めなければならないため、普及には行政の後押しが不可欠。野々木医師は「我々としても働きかけなければならない」というとともに、「心筋梗塞の治療問題は世界共通なので、ゆくゆくは世界に広げていきたい」と話している。

 

高血糖だと急性腎障害に 心筋梗塞患者、死亡率高く

 

共同通信社  2014530() 配信

 

 心筋梗塞で緊急入院した患者の血糖値が高いほど、急性腎障害を起こしやすく、死亡率が高いことが分かったと国立循環器病研究センター(大阪府)のチームが29日、発表した。血糖値が治療の際の重要な指標になるという。

 

 チームの石原正治(いしはら・まさはる)心臓血管内科部長は「心臓と腎臓の機能には緊密な関係があると知られていたが、十分検討されていなかった。血糖値を下げて急性腎障害を予防できるかが今後の課題」と話す。

 

 石原部長によると、2007年1月~12年6月に、発症48時間以内でセンターに入院した急性心筋梗塞の患者760人を対象に分析した。

 

 13%に当たる96人が急激に腎臓の機能が悪くなる急性腎障害を起こしており、入院時の血糖値が高いほど発症の確率が高いことが分かった。

 

 急性腎障害を起こさなかった患者が入院中に死亡する確率は3%だったが、起こした患者は25%だった。治療法が進んだこともあり、近年急性心筋梗塞の平均的な入院中の死亡率は5%にとどまっているが、急性腎障害を併発すると死亡率が上がることが判明した。

 

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